男女共同参画に反対するアジテーション

先週末、土曜日に映画の封切に初めて行ったことを書いたところだが、丁度数寄屋橋マリオン前でウヨク団体のアジテーションに出くわした。私は数寄屋橋阪急を愛用していることもあり、この界隈をよくウロウロするのだが、例のマリオンと西銀座デパートの間の場所に、この日もウヨク団体が陣取っていたのだ。

これまで良く出くわしたのはヤスクニの問題とホッポーリョードの問題についてアジテーションをするものであった。これらについては、私も考えるところはあるが、正直真面目に彼らの議論に耳を貸すこと自体バカバカしいほど、安直な議論を怒声のもとでぶっていることもあり、まったく私としては騒音以上の感想を持ったことはなかったのだが、この日は「男女共同参画反対」がアジテーションの内容だった。あまりに目新しいアジテーションの内容であったことと、大真面目に総論反対をぶっていたところに軽い衝撃を感じてしまった。男女平等・同権は既にエタブっている以上(オトナ語ですかね)、何かそれをチャレンジする姿勢に時代錯誤のようなものを感じてしまったのだけれど、それを臆面もなく大声でアジテーションするところに、この時代の教養人であれば、躊躇するところを、まさに臆面もなくやっていたところに新鮮さを不覚にも感じてしまった。



男女共同参画反対。これは男女共同参画をまさに「サヨク」の問題として捉えると、実は全くウヨクのテーマとして目新しいものではないのだろう。女性の差別からの解放という内容は一体全体どのような文脈から発生したのか、というとき、これを先の大戦後、連合国により押し付けられた憲法に起源をおく考え方があるが、どうもそれはそうとも限らないようである。すなわち、大正デモクラシーのもとで、列国に追いつくことを目標としていた中、既に芽のようなものは日本の国のなかにあって、終戦に際しての一連のプロセスの中に女性の参政権が盛り込まれたのはモーメンタムを利用しただけであるという歴史の解説も存在している。したがって男女同権の起源には何らサヨク的活動に結びつける必要はない。他方で、激化した60~70年代の学生運動の中で、女性の社会参加については、共産主義にそのルーツを見ることが出来るような気がされる。それがその後共産主義的発想ではなく、単に女性の機会の平等となったのは差別撤廃という発想に色濃く表れているが、女性の社会参加自体は必ずしも差別の問題から発生したわけではないようである。

今読んでいる本に「マオ~誰も知らなかった毛沢東」があるが、この中で興味深いことに毛沢東は「女子の自立の問題」について書いていることが紹介されている。毛沢東は女性が男性と同等の肉体労働ができるとし、女性は自活できるよう結婚前にたくわえをし、産後の生活費を自ら備えておくべきという主張を繰り広げているそうである。この解釈として、この本では、これが毛沢東が女性の面倒を見ないことを正当化するために作られた主張であるとしている。これは、一理ある話であるが、無論時代錯誤的な部分もあるのかもしれない。

以前、私は男女共同参画の問題は難しいと書いたが、同じことを今回も書いているだけなのかもしれないが、男女共同参画は、男性が家族を養育しないことの言い訳には使われてはならないというように思うところがある。「進歩的」とされる女性におかれては、面倒を見られるなんて、それこそ女性蔑視であると反発されるかもしれないが、それでは、全く面倒を見るべきではないとまで言うことが適当なのか、私は疑問に感じざるを得ない。「マオ」の著者のように、私も男女というのは同じ人間ながら、全くの別種であり、補完的存在として社会を支えていると思うので、男女共同参画は決して男女が同じ役割を担う社会を想定しているものと考えるべきではないと思っている。現実には男女共同参画という政府の掛け声と少子化対策という問題の両者の関係はますます我々の価値観に混乱をきたしているように思われる中、先のウヨクの叫びは、行っている理屈(国民はアホでも良い。男は男らしく、女は女らしく、礼儀正しく育てばそれでよい)は全く意味不明であったが、男女共同参画に反対を叫んでいる一点においては、心ならずしも、共感するところが少しあったのである。男女共同参画を大々的にぶちあげてしまってはいるが、それを我々の価値観の基礎としなくても、もう一度整理しなおすことがあっても良いのではないかと思ったりするのである。

(※上記は日記であり、筆者もまだまだ考え、道半ばであります。コメント歓迎)
by danpeii | 2005-12-20 01:29 | 個と社会

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